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更年期

更年期を不安に思うあなたがすべき、たった1つのこと

2021.06.25

女性の体は50歳前後に閉経を迎え、その前後約10年間を更年期と呼びます。

その間、女性ホルモンの分泌が急激に減少していくので、心身にさまざまな不調を感じやすくなります。「もしかして私、更年期かも?」と不安に思うときに何をしたらよいのか、産婦人科医の宋 美玄(ソン ミヒョン)先生にアドバイスをいただきました。

更年期は、すべての女性の体に訪れる自然なメカニズム

――更年期に関する情報は、ネットを少し検索するだけでもたくさん出てきます。女性ホルモンが低下することで健康面でこんなに弊害がある、といったネガティブな内容も多く、不安をかき立てられます。


宋先生:まず皆さんに知ってほしいのは、卵巣が女性ホルモンを分泌する機能は20代がピークで、その後は減少していき、50歳あたりで寿命を迎えるということ。それに伴って月経もなくなり、『閉経』を迎えます。この体のメカニズムは、太古の昔からずっと変わりません。いわば、月経のある女性ならばいずれ誰もが経験する、体の自然な変化なのです。

昔と大きく違うのは、人生100年時代といわれている今、50歳で卵巣が引退してもその後約50年、女性としての人生が続くということです。寿命の短かった昔は、閉経を迎えることが人生の終わりに近づくこととイコールでしたから、大きな節目だったかもしれません。けれど今、更年期はひとつの経過点として捉えるべき。そこに大きな意味があるわけでもないし、生理が終わっても女性が女性であることは変わりません。
ただ、女性ホルモンが急激に減る期間は、そのダイナミックな変動に心身が影響を受けやすいのは事実。そこに対して、婦人科で検査をしたり治療をするなどのケアは有効な助けとなります。

ストレスの原因を探るより、不調を治す手段を講じた方が早い

――ストレス社会といわれる今、ストレスがホルモンバランスを乱してしまうといった趣旨の話もよく聞きます。女性向けの記事で、30代の女性でも更年期のような症状に悩まされる「プチ更年期」「プレ更年期」といった言葉を見かけることも。ストレスによって更年期の若年化や、症状が重くなるといった傾向はみられるのでしょうか?


宋先生:ストレス社会といいますが、昔の女性だって、かなりストレスフルな生活だったはず。川で洗濯をして、冷蔵庫もなくて、家事のひとつひとつが重労働で…。そんな時代よりも今のほうが絶対に楽、と個人的には思います。現実問題として、どんな時代であろうとストレスのない人なんていないし、ストレスをゼロにすることは難しいですよね。そこを掘り下げていっても体調不良が良くなるわけでもありません。むしろ、「私はストレスだらけで調子が悪い」と考えることが、余計ストレスになってしまうような気もします。それよりも、検査をして体の状態を正しく知り、不調を治す治療を始めてみるほうが建設的ではないでしょうか。

また、先にも説明した通り、女性ホルモンの急激な減少は、卵巣の寿命に伴うもの。それは50歳前後に起こることで、「プチ」も「プレ」もありません。医学的に正しくない〝眉唾〟の噂に、振り回されるのは止めましょう。

恋愛経験や出産回数が更年期に影響するなんて噂、全く根拠がありません

――女性ホルモンに関する風説は、ほかにもたくさんあります。「いくつになってもときめきを忘れない人は女性ホルモンの分泌が高い」とか、「女性ホルモンが分泌されると潤ってキレイでいられる」など。〝女の魅力〟を図る指標として、ホルモンについて語られることはとても多いです。


宋先生:たしかに、女性ホルモンには肌の潤いやハリを高めたり、血管や骨の状態を健やかに保つ働きがあります。とはいえ、ホルモンを分泌する機能はもともと体に備わったメカニズム。個人の努力で分泌量を増やしたり、更年期を迎える年齢を遅くしたりすることは不可能なのです。マスコミからの取材で「セックスをしていないとホルモンが枯れてしまう?」とか、「出産経験がないと更年期症状も重くなる?」といった質問をよく受けます。私からしたら、そういった類の質問は、女性をむやみに脅す〝呪い〟のよう。
多くの女性が苦しめられていると感じます。セックスの有無や回数、出産経験といったことと、更年期とは全く関連がありません。

もちろん、恋をしたり生活習慣の改善を取り入れることが本人にとって楽しいことならば、悪いことではありません。でも、もし今まさに体調の変化にとまどい、不調に悩んでいるならば、効くかどうかわからない〝噂の療法〟にすがるよりも、婦人科を受診してみてほしいと思うのです。女性ホルモンの分泌低下が原因で不調が引き起こされているのならば、ホルモンを補充する治療(女性ホルモン補充療法)によってその症状は良くなります。

人生100年時代。更年期以降の50年のために、かかりつけの婦人科をもとう

――女性ホルモン補充療法は、比較的歴史の新しいもの。ここ数十年で、更年期の治療法として広く選択されるようになってきましたが、〝副作用が心配〟〝費用が高額なのでは?〟といった不安を抱く人もいます。また、なんとなく体の変調を感じていても婦人科に相談するのはハードルが高い、と躊躇してしまいがちです。


宋先生:不正出血があるとか、生理の状態が明らかに今までと違うといった症状があるならもちろん今すぐに受診していただきたいのですが、そうでない方でも、検査をして自分の体の状態を知っておくのは良いことだと思います。

確かに、婦人科にかかるかどうか迷う場合もあると思います。「ホットフラッシュのようにも思うけれど、一時的なものかもしれない」とか、「どこか内臓が悪いのかもしれない」とか。迷うときは、内科など普段からかかりつけのところに相談したら良いと思います。内科的な検査をしてみて異常がなければ「では婦人科でホルモンの検査をしてみましょうか」ということになりますし、どちらが先でも問題はないと思います。

ただ、大人の女性なら婦人科のかかりつけ医をもっていたほうがいいというのが私の考え。だって、人生は100年もあるのに、あらゆる臓器を守ってくれる女性ホルモンは50歳で出なくなってしまうんです。残りの50年、困ったときに相談できる専門家がいれば安心できます。

そして、更年期に関する治療はめざましく進化しています。たとえば、女性ホルモンを補充するために昔ならば定期的に通院し、注射を打つ必要がありました。けれど今は、自宅で使える塗り薬や飲み薬などの選択肢が増え、負担のない方法で継続することができます。漢方薬を選ぶこともできます。保険診療であれば、月額¥1,000〜¥2,000くらいの負担となることが多いです。明らかに言えるのは、私たちの母親世代とは治療環境が全く変わってきているということ。ネガティブな噂話に振り回されず、アップデートされた正しい情報に触れてほしいですね。今は、ホルモンを出す卵巣の力が急低下して体調が悪くなっているのならば、補充してその下がり方を穏やかにすればいい、という考えが一般的なものとして広まりつつあります。

まずは気負わず、検査だけでもいいので受診してみてはいかがでしょうか。特別な準備は要りません。強いてアドバイスをするならば、月々の生理の記録があると、より診断がしやすいです。

誰にでも訪れる「更年期」という人生の一期間を、不安なく快適に乗り切ってほしいです。その後の長い人生を女性として健やかに過ごすための味方として、婦人科を活用してください。

宋美玄(ソン・ミヒョン)

産婦人科医 医学博士 日本周産期・新生児学会会員、日本性科学会会員
一般社団法人ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事
丸の内の森レディーズクリニック医院長
2001年 大阪大学医学部医学科卒、同年医師免許取得、卒業後大阪大学産婦人科入局
07年 川崎医科大学講師就任、09年にイギリス・ロンドン大学病院の胎児超音波部門に留学。10年に出版した『女医が教える本当に気持ちいいセックス』(ブックマン社)がシリーズ累計70万部突破の大ヒットとなり、各メディアから大きな注目を集める。その後も、各メディアへの出演や妊娠出産に関わる多くの著書を出版。

“診療95%、メディアへの露出5%”としながらも、“カリスマ産婦人科医”として、対応しうる限りのメディア出演、医療監修等で様々な女性のカラダの悩み、妊娠出産、セックスや女性の性などに女性の立場からの積極的な啓蒙活動を行っている。

もりたじゅんこ (もりたじゅんこ)
編集・ライター
女性のウェルエイジングをテーマに、ヘルスケア、美容、インタビューなどで雑誌や広告を中心に記事制作を行なう。自身もミディ世代にさしかかり、更年期、親の介護問題など、身近に感じている。
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